低周波治療器の電極配置について

治療器関連

接骨院で低周波治療器を使って治療をする場合、電極の配置は、電気刺激の治療成果に大きく関わってきます。

電極から流れる電気刺激を、確実に患部に流すためには、電極はシワや隙間がないように、皮膚に配置されなければなりません。

ゲル電極のような粘着性のある電極は、通常良く患部に接着出来ますが、他のタイプの電極では粘着力が無いため、ベルトなど伸縮性のある素材を使って、患部に固定します。

また、骨の突出部位には電極を直接貼る行為は、NGとなります。

なぜなら、骨は電流に対する抵抗が大きく、表面が尖った部分にうまく接着しないと、不快感と熱傷のリスクが増しますので、治療効果が低減する可能性が考えられるからです。

さらに、電極同士の距離や間隔は、電流の深さと進路に影響を及ぼします。

電極間隔がより近い場所に配置すると、電流は表層を進み、電極間隔が離れていると、電流はより深部に流れやすくなるといった傾向があります。

大腿四頭筋のような比較的大きな筋群の収縮を狙う時は、筋の近位端と遠位端に電極を配置すると、電流は筋繊維の方向と平行して進むため、より効果的な治療が期待出来ます。

下記に、そもそも低周波治療とはどんなものなのかを、解説していき、その後に各症状別による電極の配置方法について、解説をしていきます。

 

そもそも、低周波治療ってどんなもの?

低周波治療などの電気を活用した治療の起源は、約2000年前に遡ると言われております。

ギリシャの医師である「エートス」は、シビレエイという魚を使って、シビレエイが放出する電気ショックを筋肉に通電させることによって、痛風(つうふう)の痛みを軽減するといった驚くべき試みが行われていました。

当時は、電気による生理学的な作用などは解明されていませんでしたから、俗に言う「経験知」によって、痛みの軽減に電気刺激が利用されていたといった時代背景があります。

その後、学術的な研究が進み、低い周波数の電気を流した時に人間の神経や筋肉が反応するということが段々と分かってきました。

このようにして、皮膚の表面に電気を流して、その結果として起こる生理作用を利用して治療する事を、低周波治療と言います。

低周波電流が人体に流れる事によって神経や筋肉に作用し、筋収縮によるポンプ作用によって血液やリンパの流れが良くなります。

血液やリンパの流れが良くなると、それに付随して組織の代謝が活発になり、痛みの軽減やコリが改善していきます。

なぜ痛みが軽減したり、コリが改善させるかというと、血行が良くなることによって「発痛物質」が除去されるからといった考えもありますが、それ以外にも電気刺激によって、痛みを感じる「閾値」が上昇することによって、痛みを感じにくくなるからといった側面もあります。

それでは、次に各症状別による電極の配置方法について、解説をしていきます。

 

低周波治療器で、疼痛コントロールを狙う場合

低周波治療の目的が、疼痛コントロールの場合は、電極は少なくとも2.5センチ以上離さなければならないと言われており、筋収縮が目的の場合には、5センチ以上離すのが一般的です。

筋収縮を狙った場合は、筋の形状が変化し、一緒に電極が動く可能性があるので、筋収縮が目的の場合には、より電極を離した配置が良いでしょう。

またより効果的に電気刺激による筋収縮を狙いたい場合には、片方の電極を筋のモーターポイント上に配置すると、最小の通電量でより大きな筋収縮が期待出来ます。

※モーターポイントとは、電気刺激において最小量の通電量で、最も大きな収縮をもたらす場所の事を指し、運動神経が筋に進入する部位の皮膚上の領域の事を指します。

しかし、大部分のモーターポイントが筋腹の中央にあるので、筋腹の中央に電極を配置することで、比較的容易に行えるといった特徴があります。

疼痛コントロールとして、電気刺激を用いる場合には、電極の配置によって治療効果が変わってくることは良くあることで、4個(2CH)の電極の場合は、疼痛部位を囲むようにするか、もしくは交差するようにして、2本のチャンネルを配置すると、より効果的になります。

 

低周波治療器で、浮腫のコントールの場合

低周波治療の目的が、浮腫のコントロールの場合、浮腫が急性炎症に起因するものなのか、または運動不足に起因するものなのか、判断が必要になってきます。

急性炎症による浮腫の形成を予防するためには、陰極側の電極を浮腫がある部位の上に直接配置し、もう片方の電極は可能ならば、より近位に配置するのがベストです。

運動不足による浮腫を軽減するためには、浮腫の部位に供給している深部静脈付近の筋収縮を電気刺激で行うと、過剰な水分を排出することが可能です。

 

低周波治療器で、創傷治癒を促進する場合

創傷治癒を促進するための電気刺激では、電極自体を創傷部位か、その周辺部位に配置させます。そして、電気刺激が損傷している部位に直接作用させる時は、電極は1個で使われるケースが多く、電気刺激が損傷している部位の周辺に適用させる場合には、2個以上の電極を使うケースが多いです。

もし、損傷している患部に直接電極を配置する場合には、使い捨てタイプの電極を使用するようにして下さい。使い捨てタイプの電極は、直接患部に置くことが出来るように、ガーゼで出来ており、塩水をガーゼに浸して使用します。

また、電気刺激を損傷している部位周辺に流す場合には、同じ患者に使用するという前提ですが、鰐口クリップにリード線が出ているような市販の電極を使用することも可能です。

 

【まとめ】

低周波治療器の電極配置ですが、治療する目的に応じて電極の配置方法も変わってきます。

上記で解説したように、「疼痛コントロール」「浮腫コントロール」「創傷治癒」など、状況に応じて、電極の配置方法も変えて行かなければなりません。

そして、症状毎に適切な電極配置が出来た時に、思うような治療効果も期待出来ると考えて良いでしょう。

最初にうちは、思うように電極を配置するのに、時間が掛かるかもしれませんが、作業を繰り返していく内に、徐々に慣れていきますので、粘り強く反復練習していくのが上達のコツになります。

電極配置の技術は、治療スキルに直結する技術になるので、試行錯誤しながらでも、日々研鑽を積んでいって欲しいと思います。

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