低周波治療器用の導子の耐久性について

治療器関連

1.低周波治療器の導子の耐久性について

低周波治療器には、導子という患部に電気を供給する部品があります。

この導子という部品は、低周波による電気刺激を行う時に、体感にダイレクトに影響してくるので、非常に重要な部品になります。

業務用の低周波治療器には、色々なタイプの導子があり、「吸引方式」「温熱方式」「半ディスポ方式」などが主に使われています。

これらの導子は、患部に直接装着させて、来院の患者数が多い整形外科などでは、1日に何百人といった患者さんを治療するので、患部にダイレクトに装着して使用するといった方式を取っている以上、消耗もそれなりにします。

整形外科や治療院では、何年か使用している内に、導子が壊れてしまって買い替えをするといった経験をされた方もいらっしゃると思います。

そして、その時に導子の耐久性能は、どの位を目安に作られているのだろうか?と疑問に思った方もいらっしゃると思います。

そこで、今回は、低周波治療器に使われている導子の耐久性について、紹介していきたいと思います。

まず導子の種類ですが、「吸引方式」や「温熱方式」、「粘着方式(半ディスポ)」といった導子があります。

2.粘着方式(半ディスポ)の導子の耐久性について

「粘着方式(半ディスポ)」は、粘着力が落ちてしまえば、それ以上使用を続けることが出来ません。

「粘着方式(半ディスポ)」は各メーカーによって、どの位使用可能かについては、謳っている内容は違ってきますが、20回程度が多いです。

ゲルタイプ(粘着方式)では、20回以上使えるケースもありますが、クリーンショットという「アルカリ電解水」をゲル表面に吹きかけることで、ゲル表面を洗浄し、かつゲル表面に水分を与えるといった方法を取っているケースもあります。

一見すると「アルカリ電解水」を使うことで、「洗浄と水分を与える」ことが出来れば、良いことばかりに見えますが、注意すべき点があります。

それは、ゲル自体を生産している大手素材メーカーS社に問い合わせて聞いた事なのですが、その大手素材メーカーS社には、「アルカリ電解水」について、色々と問い合わせがきているようなのですが、肌の弱い人に「アルカリ電解水」を塗布したゲル導子を患部に装着して治療した後に、肌トラブルに陥ってしまった報告が上がってきているとの事でした。

「アルカリ電解水」について調べてみると、「殺菌作用」と「脂肪分解作用」がありますが、この「脂肪分解作用」は皮膚のタンパク質を溶かす作用があるので、肌の弱い人に使った場合、肌が乾燥したような肌荒れが起こるケースがあるようです。

ですので、確かに「アルカリ電解水」を使用することで、ゲル導子の使用期間が伸びるいったメリットはありますが、逆に患者さんの肌トラブルが発生してしまうといったデメリットが出てきますので、使用する時にはその点を含めて、よく検討した上で慎重に使用することをお勧めします。

3.吸引方式の導子の耐久性について

次に「吸引方式の導子の耐久性」について、書いていきます。

吸引方式の導子とは、商品名でいうと「○○吸引カップ」となっている場合が多く、シリコンゴムで成型した吸引カップを患部に吸着させて電気を通電するといった方式を取ります。

吸引カップは、吸引カップ内部が真空圧になることにより、吸引カップが変形して患部に吸着することで、電気を流すことが出来ます。

吸引カップを患部に吸着させると、当然吸引カップは患部に沿って変形します。吸着させた時に一旦変形し、吸引カップが患部から外れた時に、元の形状に戻ります。

この吸引カップが変形し、元に戻るといったサイクルが、患者さんに吸引カップを装着させる毎におこりますので、来院される患者数が多い所ほど、カップが変形して元に戻るといったサイクルが多く発生します。

低周波治療器のメーカーでは、吸引カップの開発段階で、このカップが変形するサイクルを模擬的に作りだして、耐久試験を実施して、どの位の耐久性能を有しているのか、事前に試験を実施しています。

そして、だいたいですが、最低3年間、目標として5年間は毎日使っても、問題ないような作り込みをしています。

耐久試験を実施する前には、1日15分治療するとして、1時間4回となり、1日8時間で治療する場合は、1日32回となってきます。1ヶ月を22日として、704回となります。

そうすると、3年間は2112回、5年間は3520回といった数字が算出出来ますので、その回数の耐久回数を実施した後に、吸引カップが必要する性能を保持出来ているのかをチェックしていきます。

このカップが所定の変形回数において、吸着性能を維持出来ているのかを確認する試験は、機械的側面を確認する試験になりますが、その他にもアルコールに浸漬したり、し紫外線を照射したりして劣化のスピードがどの程度になるのかを、様々な面から耐久試験を実施して、問題ないかどうかの確認を実施します。

実際に導子を使う側になってみると、そんなに様々な試験などやっているように感じませんが、低周波治療器を提供するメーカーサイドは、より安全に長い間使用して頂けるように、最善の努力をしているのです。

4.温熱方式の導子の耐久性について

最後に「温熱方式」の導子ですが、いわゆる温熱導子は温度が上がりすぎないように、温度制御用のサーモスタッドが内蔵されているケースが多いです。

温度制御用のサーモスタッドは、ある温度になると接点がオンになり、ある温度になるとオフになるといった形で、接点がオンとオフを繰り返すことにより、ある一定の温度幅に温熱導子の表面温度が入るように、設計されています。

このサーモスタッドの耐久回数は、サーモスタッドのメーカーが、ある回数までは保証しますよと仕様書に耐久回数を謳っているのですが、温熱導子を開発するメーカー側は、その耐久回数を鵜呑みにするのではなく、実際にサーモスタッドをオン・オフのサイクルを繰り返しながら、目標とする温度幅の中にしっかり入るのかどうか、確認をしています。

そして、耐久回数については、上記で解説したような方法で3年間や5年間における回数を算出して、その耐久回数を超えて使用した場合においても、問題ないかどうか確認しています。

如何でしたでしょうか?

低周波治療器の導子の耐久性能について、紹介している記事は、私は読んだことがありませんので、導子の耐久性能って、どの位あるのだろうか?と疑問に思った人にとっては、少しは役に立つ記事になっていたのではないかと思います。

開発側としては、出来る限り考えられる耐久試験は実施して、問題無いことを確認して、市場にリリースしていますので、安心して使って頂ければと思います。

多少なりとも、本記事が役に立てば、幸いです。

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